昭三さんという患者さんが多い。
名前の由来は昭和3年生まれ。
同じく昭一、昭二もきっとそうだ。
(全員に聴取できていない)
武田昭三さんもその一人。
粋なシャツを着て外来に来る。
渋谷で買うそうだ。
「渋谷に行くの?」
「しょっちゅう行きますよ」
理由は「脳を刺激する」ため。
大したもんだ。
そんな武田さんが先日入院した。
転倒して骨折。
さすがに心配した。
高齢で独居の武田さん。
見舞う人も少ないはず。
入院中にボケる人も少なくない。
無事退院して受診してきた。
しっかりしている。
よかった。
ただ…
服装は「らしく」ない。
「渋谷」を感じない。
「先生にこんなこと言っちゃあ…」
「何でも言うて下さい」
「入院中、変なことがあったんですよ。
夜中にトイレに起きたんです。
すると消火器の横に着物のお婆ちゃんが
座っているんですよ。
ブツブツ何か言ってるけど聴き取れない。
トイレから帰ったらもういないんですよ」
「ほう…」
「それが数日後またいたんですよ。
同じ着物を着て同じ場所に」
「二回もおったんですか!」
「またトイレから帰ったらいない。
看護師に話すと、顔が暗くなったんです。
病院で変な噂を立てたくないのかな」
「あの病院ならありえますね…」
毎回外来受診の度に確認しに行くそうだ。
再会することはないそうだ。
須藤さん(86歳)に言われた。
「以前から言われてるのよ
見えないものが憑いているらしいの
それが守ってくれてるらしいの
原田先生のとこへ行くようにって」
「光栄です」
われながら過不足ない返答だ。
須藤さんの息子は整形外科医。
普段は息子から処方を受けている。
「本当は先生の所に行きたいんだけど」
毎回不要な「言い訳」をする。
2人ともインテリジェンスは高い。
話もオモシロイし展開する。
こういう会話への返答すること。
アドリブ力が鍛わる。
よろず相談所ワンラブ
所長:原田文植