ドキドキ学校検診


たまに医師会の依頼仕事を引き受ける。
先日、ある男女共学の進学校の
検診を依頼された。

20年ほど前に学校検診の仕事が入った。
高校時代憧れていたある女子校。
いくらプロだとかエラそうに言おうが
こちらは煩悩まみれの20代後半。
緊張しながら検診を開始した。

すぐに「幻滅」という言葉の
「実際」を知ることになる。

女子高生たちの態度の悪さたるや!

自分の高校時代も似たような
ものだったはずだ。
憧れの学校だっただけに、当時は
その客観性が持てなかった。

それから20年の時間が流れた。
男女共学だが、検診は男子のみ360人。
最近は女子生徒を男性医師が
検診することはないらしい。
気を遣わなくて済むので助かる。

真面目そうな学生ばかりだ。
みな態度もすこぶる良い。
ちゃんと並び、挨拶もできる。

世の中こんな良い子ばかりなのか!?

そんな中「慈遊(じゆう)」という
名前の生徒がいた。

「へえ、初めて見た名前やわ」
「ボクも他に知りません」
「めちゃエエ名前やな」
「でも友達にイジられます。
自由とは発音も違うのに!」

こだわる場所が高校生らしい。
彼は続けた。

「あと、変換が大変で」

この辺も最近の高校生ならでは、か。
彼に言ってあげた。

「有名になったらええねん。
『じゆう』って打ったら一番始めに
『慈遊』って変換されるように」
「はい!」


とさわやかな笑顔で退出して行った。

たかが検診といえども、
医者にかけられる言葉は大きい。
そんな風に接することにしている。

30年ぶりの宿題

GW中にプチ同窓会が開かれた。

喜寿を迎えた担任も参加してくれた。
現役時代国語の教師だった担任。
うつ病を患われたと聞いていたが、

笑顔一杯元気な姿に一同安心した。

対座し、「言葉」の話で盛り上がった。
なぜ日本語は内省的な言葉が多いのか?

日々の実感というか感覚を伝えた。

すると、担任の見解はこうだ。

日本は島国なので侵略された経験がない。
大陸は常に侵略の危機にさらされる。
侵略の危機に瀕する国にとって言葉の
役割は「伝達」が主だ。
対して、日本は「内面」に入っていく。
それができる環境だった。

だから、内省的な言葉になったのでは?

そういう見解だった。

実際、中国の故事成語には、もはや
日本でしか使われていないものが多い。

中国人がそれを知り、驚くと。

なるほど!

素晴らしい講義をご教授いただいた。

男子校の宴は大いに盛り上がった。
担任も喜んでいる様子だった。

来年の開催日程も決まり、解散となった。

後日、担任からお礼の手紙が送られてきた。
丁寧な文章。
さすが、国語の教師!
難解な「言い回し」に「懐旧」した。

そしてなんと、まさかの宿題!

(宿題)
黄昏 顔容 邂逅 蒼穹 懐旧 回顧
悔恨(の情) 乾杯 言語に絶する
咽ぶ 帰還 皐月 躑躅

上記の漢字を用いて、100字以内で
老先生へ返事文を書け。
但し、暇なものに限る!?
多忙のものは、観念の護美箱へ本文を
ホロスすべし!?

しっかりオチをつけてくれた。
粋な宿題にグッときた。

学生時代は宿題は一切やらなかった。

なぜ卒業できたか不思議だ。

チャレンジしたくなった。
担任に送ろう。
真っ赤になって「帰還」するだろう。

その作業が良薬になってくれると信じる。

<解答>

躑躅の儚さに咽びつつ回顧しています。帰還することなき言葉に、独特な顔容を持つ島国で邂逅し、言語に絶するほど悔恨する中国。疑問が蒼穹の如く解消されました。黄昏はまだですよ。懐旧しつつ、来年皐月乾杯を待ちます。

100字ジャスト!

篠原先生、どないでっしゃろ?