日本全国コンフォートゾーン

「ブッてやがんだよね!」

加山さんは江戸っ子だ。
妻と教員をしている息子の3人暮らしだ。
息子の念願で逗子に引っ越した。

「紹介状書きますよ」
と一応転院を提案した。
にも関わらず通ってくれている。
2時間かけて!

やはり地元へ帰るとホッとするらしい。

高齢者の引っ越しは大変だ。
鬱になる人も少なくない。

快適領域の変化に耐えられないのだ。

「住めば都、エエとこでしょ?」
「悪いヤツはいない。
でもブッてやがんだよね」
「たしかに洒落た人多そうよね。
息子さん、それが欲しかったんでしょ?」

加山さんは苦笑いするしかなかった。

とにかく魚は美味いそうだ。
「それそれ、加点方式よ!」
考え方次第だ。
良い所を見るか悪い所を探すか。
アラ探しをする姿勢は減点方式だ。
帰ってくる可能性があるならいい。
もう家も買ってしまったのだ。
終の住処になるのだ。

アラ探しの余生は寂しすぎる。

「2か月に一回ウチに来たらエエですよ」
これからも加山さんは隔月で帰省する。
下町という田舎ができた。
という加点方式も悪くない。

Like A Rolling “Stone Free”

早い話が
灯台の下は暗いけど、隣の芝は青く見える
ということだ。

「田舎がある人はいいなあ」
木元さん(84歳女性)はもらした。
木元さんは東京生まれ東京育ち。

GWどこへも出かけなかったらしい。

世界住みたい都市ランキング。
東京は7位である(ちなみに3位は大阪)。
世界中の人が住みたい場所だ。
生まれ育った人にはわからない。

ありがたみがないのだ。

元木さんは自転車圏内しか移動しない。
東京タワーに上ったことがないし、
六本木にも新宿にも行かない。
多分田舎に生まれていても同じだろう。

田舎から出なければ故郷は存在しない。

移住すれば「うらやましい」は消える。
定住者だけがうらやましがるのだ。
実際、同級生に
「東京ええなあ」
とよく言われる。
「住めばええやん」

移住する人は、まずいない。

「同じ場所に留まり、うらやむこと」

多くの人にとってそれが「快適」なのだ。

ちなみに「快適」は “comfort” と訳される。
“comfort” とは
“com(完全な)・fort(力)”
つまり「完全な力を出せる状態」だ。
ホームでは完全に力を発揮できる。
アウェイでは力が出せない。
日本語の「快適」は「受け身」な印象だ。

お山の大将でいることは快適か?
「内弁慶」は幼稚臭い。
”Rolling Stone” になると決めた。
宇宙は広い。
飽きたらすぐに移動だ。