風評被害


「風評被害たまんねえよ」
山中さん(72歳男性)は理容師だ。
酒飲みで毎度赤ら顔をしている。

ご両親が100歳近くまで生きた。
長寿の根拠は人の精神を自由にする。

お祭り好きで江戸の文化が大好き。
粋な江戸画の版画をくれる。
B級グルメの情報もたくさんくれる。
典型的「下町っ子」だ。

院内感染が続出した中核病院の
すぐそばで床屋さんをしている。

「人が通らねんだもん。
風評被害は怖いねえ」


緊急事態宣言と自粛が原因だろう。
風評被害ではない。
前からお客さんは少ない。
いつも嘆きつつ、酒を飲む理由に
していたのだから。

それはともかく、風評被害への恐怖が
「たらい回し」を生んでいる。

当院でも経験してしまった。
そのことをあるメディアを通して
喋ったら、取材殺到状態だ。

切り取られ「本当は」と異なる部分が
使われているようだ。
(テレビがないので観ていない)
センセーショナルな部分が
クローズアップされる。


とても勉強になった。
一次情報に触れることで取材が来る。
その取材という一次情報がなければ
見えない景色もあった。


お陰で、文書にまとめることができた。
自分の中で整理されたことが収穫だ。
これで、検証する材料ができた。
取材時、これを手渡すことにしよう。

山中さんも「客が減る」という
一次情報を経験した。
ただ、残念なのは、検証・分析が
甘いことだ・・・

いつでも怪我の功名


地域の中核病院で新型コロナ陽性が
10人以上出た。

院内感染も疑われているようだ。
連携している患者さんも多い。

「やっと近くに来たか!」
不謹慎だが、妙にワクワクしている。
これまでは二次情報、つまり
「対岸の火事」でしかなかった。
ようやく一次情報に触れるときが来た。

もともと逃げ切れるものではない。
不安がる患者さんも多い。
「大丈夫。治したげるから」
本気でそう思っている。


ウイルスと喧嘩する気はない。
ライオンや象を飼いならした
マサイ戦士のような気分だ。

(調子に乗りすぎた表現か・・・)

やるべきことは限られている。
患者さんにもそう指導する。
原則を淡々とやるしかない。
心の乱れは免疫も下がる。
原則を守り、弱気にならないことだ。

慎重であることとパニックは異なる。
80歳の患者さんなら、80回の冬を
越してきたということだ。
今以上にずっと劣悪な医療でも
冬の感染症と付き合ってきた。
身体が知っている「知恵」は偉大だ。

もちろん科学者として、細心の注意を
払い、最新の情報を集める。
これだけは素人には無理だ。

隣国の成功例や失敗例も謙虚な姿勢で
学ぶべきだ。
体質や地理的にも似通っている部分が
多いのだから。
この経験にも「怪我の功名」は
必ず存在する。