2回戦突破を目指して


「うちは一回戦しか来ない店だから」
山本さん(66歳)は浅草で長年、
居酒屋を経営している。
「一回戦」とは「一軒目」という意味だ。
他の店で酔った若い客はリスキーだ。

「若い子が来ると常連が帰るのよ」
スナックママの佐藤さん(79歳)は嘆く。
スナックで歌って騒ぐのはもっぱら
ヒマな若者。

若者がコロナを媒介している。
そういう風評があるものだから、
年寄りは若者が来ると退散する。
会社の飲み会も自粛だらけだ。

良くも悪くも日本は「酒文化」だ。
酒の席で先輩から説教され、教わる。
そういう機会がなくなる。
世代間の分断はますます進むだろう。

先週末帰省した。
東京の医者の帰省は地方には迷惑かも
しれないが、帰省先は大阪だ。
みな1週間前に風邪を引き終わり、
PCR検査も確認済みだ。

数カ月ぶりに孫と再開する母親の
喜びようはなかった。
別れ際に孫から順番にハグされる
母親の嬉しそうな顔。

この景色が当たり前になるように
なんとか手を打とう。

伝説のママ@浅草

午前受付終了間際…

今日もホロ酔いで来院した右柳さん。
浅草で息子とスナックを経営している。

御年79歳!

「おとといなんて店閉めたの12時よ」
夜中ではない、昼の12時だ!

異常に元気なママだ。
お店をオープンして30年。

年中無休が自慢だ。

「先生、”うつ”なの。助けて」

が口ぐせだ。

「そう…可哀想に…
宝くじで100万円当たったら?」
「そしたらもちろん治るわよ」
「そんなん「うつ」と違います」

とお約束のやり取りをして診療開始。

「昨日はお茶ひいたのよ」

客が「ゼロ」という意味だ。
ため息をつきながらの険しい表情。
忙しいと、右柳さんのうつは治る。

大変わかりやすい。

タバコを止める決意をした。
飴を舐めることにした。
飴舐めながらタバコを吸ってしまう。

禁煙は失敗に終わった。

右柳さんはビールが大好きだ。
「レッドアイ」はもっと好きだ。
ビールとトマトジュースのカクテルだ。

「レッドアイはデルモンテに限るわよ」

タメになる…

右柳さんは最近太り気味だ。
本人によると
「うどん食べ過ぎてるせいよ」

だそうだ。

「香川県出身よね?やっぱり
うどんにはうるさいでしょ?」
「最近どこのうどんも美味しいわよ。
世の中美味しいもんばっかりよ」

こんな調子だ。

飴とうどんが肥満の原因なのだろう。

孫の結婚式に列席した。
孫は教師、新郎は公務員だ。
「みんなマジメで肩凝ったわよ。

あんなマジメな結婚式初めてよ」

土地柄、本職の人も多いらしい。
右柳さんも不良をマジメにやっている。

「お孫さん素晴らしいじゃない!」
右柳さんは満更ではない表情になる。

孫を褒められて嬉しくないはずがない。

「身体はうちに任せて仕事に専念して。
お互い死ぬまで仕事しましょうね」

毎回右柳さんにそう伝え、診療終了。

医療もスナックも接客業だ。
これほど勉強になる患者さんはいない。
やはり「不良」はしぶとく生き延びる。

みんなもっと「不良」を勉強すべきだ。

(写真と本文は関係ありません)