日本全国コンフォートゾーン

「ブッてやがんだよね!」

加山さんは江戸っ子だ。
妻と教員をしている息子の3人暮らしだ。
息子の念願で逗子に引っ越した。

「紹介状書きますよ」
と一応転院を提案した。
にも関わらず通ってくれている。
2時間かけて!

やはり地元へ帰るとホッとするらしい。

高齢者の引っ越しは大変だ。
鬱になる人も少なくない。

快適領域の変化に耐えられないのだ。

「住めば都、エエとこでしょ?」
「悪いヤツはいない。
でもブッてやがんだよね」
「たしかに洒落た人多そうよね。
息子さん、それが欲しかったんでしょ?」

加山さんは苦笑いするしかなかった。

とにかく魚は美味いそうだ。
「それそれ、加点方式よ!」
考え方次第だ。
良い所を見るか悪い所を探すか。
アラ探しをする姿勢は減点方式だ。
帰ってくる可能性があるならいい。
もう家も買ってしまったのだ。
終の住処になるのだ。

アラ探しの余生は寂しすぎる。

「2か月に一回ウチに来たらエエですよ」
これからも加山さんは隔月で帰省する。
下町という田舎ができた。
という加点方式も悪くない。

30年ぶりの宿題

GW中にプチ同窓会が開かれた。

喜寿を迎えた担任も参加してくれた。
現役時代国語の教師だった担任。
うつ病を患われたと聞いていたが、

笑顔一杯元気な姿に一同安心した。

対座し、「言葉」の話で盛り上がった。
なぜ日本語は内省的な言葉が多いのか?

日々の実感というか感覚を伝えた。

すると、担任の見解はこうだ。

日本は島国なので侵略された経験がない。
大陸は常に侵略の危機にさらされる。
侵略の危機に瀕する国にとって言葉の
役割は「伝達」が主だ。
対して、日本は「内面」に入っていく。
それができる環境だった。

だから、内省的な言葉になったのでは?

そういう見解だった。

実際、中国の故事成語には、もはや
日本でしか使われていないものが多い。

中国人がそれを知り、驚くと。

なるほど!

素晴らしい講義をご教授いただいた。

男子校の宴は大いに盛り上がった。
担任も喜んでいる様子だった。

来年の開催日程も決まり、解散となった。

後日、担任からお礼の手紙が送られてきた。
丁寧な文章。
さすが、国語の教師!
難解な「言い回し」に「懐旧」した。

そしてなんと、まさかの宿題!

(宿題)
黄昏 顔容 邂逅 蒼穹 懐旧 回顧
悔恨(の情) 乾杯 言語に絶する
咽ぶ 帰還 皐月 躑躅

上記の漢字を用いて、100字以内で
老先生へ返事文を書け。
但し、暇なものに限る!?
多忙のものは、観念の護美箱へ本文を
ホロスすべし!?

しっかりオチをつけてくれた。
粋な宿題にグッときた。

学生時代は宿題は一切やらなかった。

なぜ卒業できたか不思議だ。

チャレンジしたくなった。
担任に送ろう。
真っ赤になって「帰還」するだろう。

その作業が良薬になってくれると信じる。

<解答>

躑躅の儚さに咽びつつ回顧しています。帰還することなき言葉に、独特な顔容を持つ島国で邂逅し、言語に絶するほど悔恨する中国。疑問が蒼穹の如く解消されました。黄昏はまだですよ。懐旧しつつ、来年皐月乾杯を待ちます。

100字ジャスト!

篠原先生、どないでっしゃろ?