天国日記(1)

『天国にいちばん近い島』
中学生の頃、ヒットした邦画だ。
映画は観ていない。

同名主題歌だけが頭の中で響く。
短調の曲だったはずだ。
声の主、原田知世の音程はあやしい…

今、ニューカレドニアにいる。
色々な「縁」でここにたどりついた。

何をしているか?
観光もせず、モノを書いたり、論文を
読んだりして過ごしている。

「やるべきこと」は何も変わらない。
ただ、場所が変わると視点が変わる。
ような気がする…

本当に美しい場所だ。
食べ物も美味い。
物価はとても高いが…

アルコールなしで十分ハイな
状態が続いている。

天国に近いからだろうか?

観光もしないのに、子供たちも
喜んでいる。

プールが冷たすぎるのが玉に瑕だ。
風が強すぎるからだ。
「蓋しといたらいいんじゃない」
という娘の提案に思わず笑った。

聞くと、年中風が強い場所らしい。
ただし、ウインドサーフィンの
大会中だけは風が止むそうだ。

みるみる痩せる走り方

早い話が
人間は「移動」してこそ機能する
ということだ。

最近ガラにもなく走っている。
隅田川のテラスを気の向くままに。

走ることを避けていた。
走った後の爽快感は嫌いでないが、
時間が勿体ないと感じていたのだ。

それが最近変化してきた。
走りながら色々できるからだ!
スマホの進化が大きい。

まず、音楽プレーヤー機能。
語学の勉強ができる!
速度を3倍速まで変えられる!
1時間走れば3時間分学べる。

自宅では絶対に食指が動かない。
通勤時間ゼロの身としては貴重だ。

次に、口述筆記能力だ。
最近、格段に機能が向上している!
走っている間に浮かんだアイデアが
そのまま文字起こしされる快感!
この機能を使わない手はない。

そして、水辺という環境がいい。
都会の光彩が川面に映るのが艶っぽい。
日の出の眩しさは少しキツイが…

心地よい疲労は最高の睡眠薬だ。
付加価値のお陰で走ることの喜びが
少し理解できた気がする。

気が向いたら止めるだろう。
飽きるまでは続きそうだ。
「頑張る」も「努力」もないのは
言うまでもない…

それ、迷惑ですよ

早い話が
世界は誰かの仕事でできている
ということだ。

田島さん(74歳、女性)はホテルの

メイドをしている。

ブラック(?)ホテルのようだ。

あきらかに「こき使われて」いる。

先日は、台風の影響で田島さんしか
仕事に来れなかった。
「大江戸線は走ってたのよ」 

なんと一人で3棟のホテル20部屋を 

“made” したそうだ。

田島さんの仕事を知ってから、
ホテルでの過ごし方が変わった。

掃除する田島さんの姿を

思い浮かべるようになった。

ベッドを元の状態に戻して退室する。

誇らしげに田中さんにそう伝えた。

「それ一番迷惑なのよねえ」

どうせ回収するからそのままの
方がいい、らしい…
むしろ手間になるそうだ。
聞いておいてよかった。

これから気をつけよう。

田島さんの見た目は年齢より若い。
仕事で身体を動かしてきたお陰
かもしれない。
生活習慣病も落ち着いている。

いわば、労働の「副作用」だ。

膝や腰は、やはり痛い…
「74年間働きっぱなしでしょ?」
「息子に言われたの。

身体ボロボロじゃんって」

じゃあ、お前が全部面倒みろ!

と言いたい気持ちをグッと堪えた。

子供が、親に対して「他人事」
のような物言いをする。
決して少なくない。

正直、気持ちの良い話ではない。

高齢者の労働は増え続けるだろう。

「快適」の背後にいる高齢者たち。

「ちゃんと見てくれてますよ。

ええ席用意してくれてるはず」

天を指差してそう伝えるのが
精一杯だった。
田島さんは笑ってくれた。