午前受付終了間際…
今日もホロ酔いで来院した右柳さん。
浅草で息子とスナックを経営している。
御年79歳!
「おとといなんて店閉めたの12時よ」
夜中ではない、昼の12時だ!
異常に元気なママだ。
お店をオープンして30年。
年中無休が自慢だ。
「先生、”うつ”なの。助けて」
が口ぐせだ。
「そう…可哀想に…
宝くじで100万円当たったら?」
「そしたらもちろん治るわよ」
「そんなん「うつ」と違います」
とお約束のやり取りをして診療開始。
「昨日はお茶ひいたのよ」
客が「ゼロ」という意味だ。
ため息をつきながらの険しい表情。
ため息をつきながらの険しい表情。
忙しいと、右柳さんのうつは治る。
大変わかりやすい。
タバコを止める決意をした。
飴を舐めることにした。
飴舐めながらタバコを吸ってし まう。
禁煙は失敗に終わった。
右柳さんはビールが大好きだ。
「レッドアイ」はもっと好きだ。
ビールとトマトジュースのカクテルだ。
「レッドアイはデルモンテに限るわよ」
タメになる…
右柳さんは最近太り気味だ。
本人によると
「うどん食べ過ぎてるせいよ」
だそうだ。
「香川県出身よね?やっぱり
うどんにはうるさいでしょ?」
「最近どこのうどんも美味しいわよ。
世の中美味しいもんばっかりよ」
こんな調子だ。
飴とうどんが肥満の原因なのだろう。
孫の結婚式に列席した。
孫は教師、新郎は公務員だ。
「みんなマジメで肩凝ったわよ。
あんなマジメな結婚式初めてよ」
土地柄、本職の人も多いらしい。
右柳さんも不良をマジメにやっている。
「お孫さん素晴らしいじゃない!」
右柳さんは満更ではない表情になる。
孫を褒められて嬉しくないはずがない。
「身体はうちに任せて仕事に専念して。
お互い死ぬまで仕事しましょうね」
毎回右柳さんにそう伝え、診療終了。
医療もスナックも接客業だ。
これほど勉強になる患者さんはいない。
やはり「不良」はしぶとく生き延びる。
みんなもっと「不良」を勉強すべきだ。
(写真と本文は関係ありません)