ぜーんぶ理不尽

史原さん(80歳)は脊髄小脳変性症。
徐々に歩行が不自由になってきている。
明らかに不機嫌な顔で入室した。

「イライラしてます?」訊いた。

「仕方ないですよね」
「仕方ないと思ってはいけません。

申し訳ないけど、くらいにしときましょ」

付き添いの妻はニコニコ見守っている。
夫のイライラに同情し、耐えている。

人はなぜイライラするのか?

思い通りにならないからだ。

では、思い通りになることってあるのか?

世の中思い通りにならないこと、
理不尽なことばかりだ。
 

マジメに仕事をしているのに放火される。

自動車が突然突っ込んでくる。
原因不明の病になってしまう。

今朝、電話で怒鳴られ、突然切られた。
全くこちらに落ち度がないにも関わらず…

自分に非があると何故か怒鳴る人がいる。
笑い飛ばせる余裕を誇らしく感じた。

ご夫婦にそんな話をした。

笑う史原さんに最後に言った。
「奥さんが元気で健康でよかったね。
16歳年下?それは理不尽よ!」

漆原さんは照れ笑いをしていた。

許せない理不尽も確かにある。
でも、理不尽こそが道理なのだ。