死人にクチあり

早い話が
他人の目は死んでも続く
ということだ。

「毎週花を替えに行ってるんです」

夫の希望通りの場所に墓が立った。
場所はなんと新潟県の山奥だ!
85歳の鳥谷さんは一人で行けない。
だから甥と姪にお願いしている。
夫は生前よく可愛がったそうだ。

「それにしても毎週墓参りは大変でしょ?
そこまでしなくてもいいのでは?」

訊いてみた。

夫の墓は霊園の入り口にあるそうだ。
だからみなの目に留まる。
夫に恥ずかしい思いをさせないように。
その思いが毎週墓参りさせている。

情の深い家族にアッパレだ。

「独りぼっち(墓地)にならないね」
鳥谷さんは大笑いしてくれた。
ダジャレのクオリティをはるかに超えて…

おカネがなくても生きていける?

元路上生活者を収容している施設がある。
利用者さんを数人往診している。

貧困ビジネスと揶揄されることもある。
しかし当院が関わっている施設は、

どう考えても行政より上手だ。

これが非常に手厚い!
全員そこそこ広い個室を持っている。
3度の食事はもちろん、介護も不足ない。
医療機関への相談も手際が良い。

利用者さんを数人往診している。
一筋縄にはいかない人が多い。
スタッフも堅気に見えない人が多い。
組織に所属していたかどうかは不明だ。

訊くこともないし…

とにかく雰囲気が独特だ。
しかし、バランスしているのだ。
ある意味「同類相憐れむ」の様相だ。
所内は笑顔も多く、明るい。

だから診療しやすいのだ!

以前ダルクとも少し関わったことがある。

よく似ている印象だ。

とにかく色んな事情でここに流れ着いた。
この場はシェルターなのだ。

シェルターと呼ばれる場の最大の問題。
それは高すぎる理念ではないだろうか?
スタッフの過剰なボランティア意識…
うまくやっている施設を見て実感する。
上から目線では人は心を開かない。
上から目線では何も始まらない。
医者は自分の仕事を淡々とこなす。
それしかない。

返報性の法則

早い話が
タダより高いモノはない
ということだ。

妻が子供を迎えてに行く。
幼稚園の終業は14時だ。
「遅れて来る人おる?」
訊いてみた。
「少ないけどおる」

終業のあとも延長保育がある。
迎えに来ない親は甚だ迷惑だ。
園にとっては悩ましい問題だ。
実は実験結果がある。
保護者の遅刻が横行する保育園。
保育園がとった策。
遅刻してきたら10分500円の罰金制。
遅刻を減らす目的の苦渋の選択だ。

結果どうなったか?

遅刻が増えたのだ!
「払えばいいんでしょ」
そういう人が増えたのだ。
預かりに対価が発生してしまった。

すると恩義が権利に変化したのだ。

 

そんな話をしていた矢先。
妻のメガネの柄の部分が壊れた。
ネジがなくなったそうだ。
取り急ぎ、近隣の眼鏡屋に持って行った。
全国展開しているチェーン店だ。
なんと、無料で修理してくれた。
洗浄までしてくれてピカピカだ。
これには妻も参った。
料金を取ってほしいと心底思った。
次回そこで買わなきゃならなくなる。
下町にいてつくづく感じる。
贈答品の多いこと!
まあ手ぶらでどこにも行けない。
わらしべ長者にならされてしまう。
「お返し」の連鎖は止まらない。

妻は苦労しつつ勉強しているようだ。

人間は意外と払いたい動物なのだ。
この世で最も高価なモノ。
勿論おカネと比べ物にならない。
「ココロ」のことだ。