それ「が」いいのだ

早い話が、すべて
「だからよかった」
にできる。

本当に愚痴が多い。
「頭も痛いし喉も痛い」
「何で?」
「昨日初めて太極拳に行ったの」
「ええことやん」
「変な動きで身体が痛いし、すっかり
調子が狂ったの」
「ええことしに行ったのに?」
「もう二度と行かない!」
この調子である。
子どもか!

「だからよかった」を口ぐせに。
そう指導することに。

もちろん一筋縄に行く相手ではない。
だからお手本を少々見せてあげた。

「夫が死んだ」
「だからよかった。今自由でしょ」
「今日は寝込んだ」
「だからよかった。事故に遭わなかった」
「娘が来てくれなくなった」
「だからよかった。ケンカしないで済んだ」
てな具合。

大抵、みな理由を求める。
その理由があり、だからよかった、と。
それはズルい。
「だからよかった」と先に言い切る。
人間の心は理由を開発できるのだ。

物事には必ず表裏がある。
どちらか側だけを見るくせ。
自分都合で良し悪しを判定するくせ。
それは治した方がいい。
「だからよかった」側も必ず存在する。
だからよかった!
止まらずに前に進む秘訣だ。
だからよかった。

不倫と贖罪

「母ちゃんには内緒だよ」

ご本人は忘れているのだろう。

以前、若気の至りを告白したことを。
40年も前の話。
遊んでしまった。
そしてもらってしまった。
膿が出て汚れた。

「そんなことあったんですか!」
水川さんは冒頭の言葉を発した。

水川さん(70歳)は腹部エコーをした。
前立腺が石灰化していた。
病的でもなく、無視できるレベルだ。
結果を説明する。
イタズラ心が働いた。

「心配はいらないんですよ。
これからどうなるわけでもない。でも…
何でこうなったんだろう。心当たりは?」
「えっ?」
「病気もらったりとか。なかった?」
前に聞いているのにトボケた。
もっかい話させたかったからだ。

「昔遊んだことがあるんだよ」
「いつの話?結婚後?」
「そう。だけど40年も前だよ」
「志乃さん(妻)は知らんのでしょ?」
「相手は同級生なんだよ」
「!(絶句)」
「焼けぼっくいってヤツだよ」
「その相手からもらっちゃった?」
「しばらく付き合ってたんだよ。
そしたらうつされたから。しかも、
当時は一本一万円する注射を
一週間打たれたんだぜ。もう参ったよ」
「まあ、背に腹は代えられへんもんね」
「相手もいたからさ、マズいしね」
親指を立てて水川さんはそう言った。
「W不倫?」
衝撃の事実が続出した。
「母ちゃんに内緒だよ」

まさかこのフレーズを再び聴くとは…

10歳年下の奥さんは働き者だ。
性格も明るく、芯が強い。
3度の大病(難病)を乗り越えた。
水川さんはいつも奥さんを労っている。
妻の病気が発覚したとき外来で泣いた。
快復したときも感謝の気持ちで涙した。

贖罪の念は人を優しくするのかも。
とすれば少々の不良も許される…
はずはない。

不登校からのエクソダス

中1の孫が不登校になった。

祖父小川さんの家に逃げ込んだ孫。
案の定、個室でゲーム三昧。

小川さんご夫妻は手を焼いていた。

とにかく引きこもりは良くない。

あの手この手で孫にはたらきかけた。

祖母であるまゆ子さんは早稲田大学出身。
自宅で英語を教えようとした。
孫は全然乗ってこない。
一緒にゲームを、と百人一首を始めた。
子どもの記憶力と反射神経はスゴイ。

まゆ子さんはすぐに孫に勝てなくなった。

今度は卓球に連れ出した。
当院の3階には卓球台がある。
卓球をしに当院に通い始めた。
外出成功だ!
3階にはピアノもある。
まゆ子さんはピアノも練習している。

2月にピアノを披露してくれた。

中2に進級した孫は登校し始めた。

進級してからは皆勤だそうだ!

祖父の小川さんは嬉しそうに言った。
「出無精だった女房が出るようになった。

孫のおかげですよ」

まゆ子さんには胃がない。
20年前に胃がんで胃を全摘した。
小分けで少量しか食べられない。
だから身体はガリガリだ。
それがイヤで出無精になった。
不登校の孫を連れ出したおかげで
自信が出たのか、すごく活発になった。
色んな会合にも参加するようになった。

これぞまさに「怪我の功名」だ。

親の難問をじじばばが解決した。

じじばばの難問を孫が解決したのだ。

後日談。
孫の百人一首の腕前。
校内で断トツ、無敵になった。

祖母の影響でピアノも始めた。

素晴らしい!